自衛隊イラク派兵違憲訴訟の会・熊本
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ニュースレター9号 より 2006.09.16

9月16日原告団会議開催!

国際交流会館会議室にて
国際交流会館国際会議室にて


9月16日熊本市の国際交流会館で、原告団会議を開きました。熊本訴訟もいよいよ正念場を迎えました。7月10日の口頭弁論で亀川裁判長はこれから立証段階へ進むことを告げました。弁護団へは立証計画を出すよう要請がありました。原告も陳述書を提出して、イラク派兵によっていかに損害を受けたのか、いかに平和的生存権が脅かされているのか立証することが求められています。今後の訴訟展開についての意志一致を図るべく、今回の会議は開かれました。

●名古屋の山本みはぎさんが講演

山本みはぎさん

講演される名古屋訴訟原告の
山本みはぎさん

まず、会議の冒頭で名古屋訴訟の原告で、小牧基地からの空自派兵反対運動など様々な平和運動に取り組んでいる山本みはぎさんの講演がありました。山本さんはすでに第1審判決が出された名古屋訴訟はじめ全国の訴訟の状況、判決の問題点などについて話されました。

4月14日に出された名古屋訴訟第1審判決は判決文220ページのうち裁判所の判断はわずか6ページで、被告国側の主張そのままの判決でした。「平和的生存権は具体的権利ではない」「憲法9条がいう『平和』の概念は『抽象的』なもの」「原告らが主張する精神的苦痛は(中略)自らの信条・信念・憲法解釈等に反することによって生じた個人としての義憤の情の感情の領域の問題にすぎず」「間接民主制の下によって不可避的に発生するものとして受忍されるべし」として門前払いの最低の内容でした。

山本さんは「私たちが主張しているのは、抽象的な『平和』論議ではない。今、現に行われているイラク派兵が、憲法前文に書かれた『平和的生存権』の考え方、憲法9条に具体化されている平和主義からみて、明らかな違反ではないかと主張しているのだ。裁判所は私たちの正当な怒りを矮小化し、逃げている。立憲主義を否定している」と批判しました。更に名古屋小牧基地を拠点とした航空自衛隊のイラク派兵の問題点にふれ、「基本計画の変更によりイラク全土の空港を対象に米軍の軍事作戦を支援する『安全確保支援』に重点が移っていて、明らかな憲法違反の活動に当たる」と述べました。

●全国の訴訟の動きについて報告

続いて事務局の田中さんより名古屋で開かれた全国原告団会議の報告が行われました。8月26日から27日にかけて開かれた会議では、仙台を除く全国の原告団の代表が参加。各訴訟の現状が報告された。

札幌では1審継続中で、山田朗証人(軍事関係)などの証言を勝ち取っている。栃木は7月に判決で敗訴、控訴の方針。東京は本人訴訟でバラバラに判決が出ている。勝訴は1件もない。静岡は6月9日に判決、敗訴となり控訴した。山梨は昨年10月に敗訴の判決。控訴せず運動で反撃する。京都は1審継続中。大阪「ゼニカネ訴訟」(本人訴訟)は昨年9月1審敗訴し、控訴したが6月29日控訴審判決で敗訴。上告せず。関西訴訟は7月20日差し止めは「適法」と認めた上で棄却判決。内容では1歩前進か。岡山は1次から3次まで提訴し、1審継続中。裁判所が原告の意見陳述をさせない。以上のような状況が各地から報告された。

今後の状況を見据えて、12月のイラク特措法延長に反対する全国的な運動の展開や、自衛隊110番を全国の弁護団持ち回りで毎月1回ずつ継続していくことなどが話し合われた。27日午後は参加者が空自小牧基地司令にイラク派兵に反対する申し入れを行った。


●責任転嫁して逃げまわる裁判官!

続いて事務局よりすでに下された各地の判決の批判が提出された。それによると平和的生存権の権利性を否定する内容に於いてほぼどの判決も一致している。「平和のうちに生存する権利という概念はその具体的内容や外延は不明確で特定されていない」(ゼニカネ訴訟1審判決)
「平和のうちに存在する権利という文言の意味するところは、専従と隷属、圧迫と偏狭、恐怖と欠乏などからの解放を含む広範かつ抽象的なものであって、その具体的内容や外延は不明確で特定されていない」(静岡訴訟判決)

また原告が被った精神的苦痛などの評価についてもほぼ同じような判断を示している。曰く「国家の措置、施策が自らの信条、信念、憲法解釈等に反することによる個人としての義憤の情、不快感、焦燥感、挫折感等の感情の領域の問題」「間接民主制下において不可避に発生するものとして受忍されるべき」(山梨判決)
「国家の措置、施策が自らの信条、信念、憲法解釈等に反することにより生ずる義憤や挫折感等の感情であって」「当該政治制度の下での政治的活動などを通じて回復すべき性質のもの」(静岡判決)

こうした内容は裁判所が入り口に於いて原告の訴えを直視せず、憲法が完全に空洞化され、裁判所が行政府の完全な違憲行為に対して憲法によって付与された違憲立法審査権を投げ捨て、イラク派兵を根拠とした原告の不安や怒りを挫折感などに矮小化して責任転嫁していることが批判されました。

●原告全員が陳述書を提出しよう!

こうした全国の裁判の動きの中で、結果的に「棄却判決」が出されたとはいえ、関西訴訟判決では「原告らが、本件派遣等によって、生命・身体に対する危険を覚えたり、戦争に加担しないで平和に生きたいという思い、人殺しに加担したくないとの信念、自己の納める税金を戦費に使用されたくないとの願いを否定され、精神的苦痛を被ったことが認められる」と判示し、「人格権に基づく本件派遣等差し止めの訴えは適法」という判断を示しました。これを引き出したものは原告の陳述書が証拠として採用され、証人調べを勝ち取ったことが挙げられます。

熊本訴訟の勝利のカギもこの原告の陳述書にあります。原告全員が裁判所に陳述書を提出し、自分がなぜ訴訟を起こしてまでも自衛隊のイラク派兵に反対するのか、自衛隊のイラク派兵によって自分がいかに傷つき、抑圧されているのかを丁寧に裁判所に訴えるのです。

以上のことを確認し原告団会議を終えました。

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