自衛隊イラク派兵違憲訴訟の会・熊本
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2005.01.10 現地調査  2005.01.17県港湾課
(この記事は旧サイトより転載しました)


八代港が「テロ対策」のフェンスで囲まれた!
みなと祭りも中止に!


船舶や乗組員などの安全確保を目的とする海上人命安全条約(SOLAS)の改正に伴う国内法の制定(2004年4月7日成立、同年7月1日施行)にともない、熊本県は昨年7月から八代港をはじめ、三角、熊本新港の3貿易港で埠頭を取り巻く保安用のフェンス(有刺鉄線あり)を張り巡らし、市民の立ち入りを規制し始めた。八代港では外港の岸壁の約8割(2.7km)が規制区域となり、市民が魚釣りや散歩、デートなどで港に入場する事はできなくなった。17年つづいてきた「みなと八代フェスティバル」(7月20日前後開催)も昨年は中止に追い込まれたが、八代市によれば今年も多分できないだろうという。


市民を敵視するフェンスと有刺鉄線


このことを私たちが知ったのは、11月23日の結成大会で、八代のNさんから「テロ対策」を口実に平和的生存権が脅かされているという報告を聴いてからであった。1月10日にNさんの案内で、八代港で現地調査を行った。

フェンス公園や民家の周りのフェンスを想像していた私たちの前に立ち現れたのは高さが2mくらいのフェンスとその上に道路側に突き出た有刺鉄線。ゲートは昔の関所を思わせるような直径3〜40センチもある鉄柱(高さ4mくらい)が2本そびえ立つ頑丈なものだった。ゲートにはガードマンが常駐し、ここでチェックを受けないと中には入れないという。今年の3月までには監視カメラや照明設備も設けられるそうである。これでは市民が気軽に港に立ち寄る事は無理であり、誰も近づかなくなってしまうだろうと思われた。
ゲート


国土交通省が県の広報にクレームをつける!


現場調査を終えて、1月17日管理責任者である県港湾課を訪れ、説明を受けた。対応した港湾課の職員は、開口一番多くの県民から抗議の電話が殺到して大変だったと言った。港湾管理者としての県は港に市民が近よれなくなる事は極力避けたかったし、県がこのために予算を組む事も大変だったと述べた。予算としてはゲート・フェンス設置費として3港で一千万円強、警備費として年間三千万円くらいかかるという。法律が七月一日施行なので六月末にフェンス工事が完成し、六月二六日には地元紙(熊本日日新聞)に広告を出し、県民への理解と協力を呼びかけたという。

看板(不審者・不審物などに注意のお願い)ところが、驚いた事に、「国土交通省からお叱りを受けた」というのである。その理由とは「なぜこんな広告まで出すのか?余計な事はするな!」という内容だったとか。これには港湾課の担当者もさすがに怒りがこみ上げてきたという。港湾管理者として、県民の安全と港湾を県民のために開かれたものにしたいと考えていた県にとって、フェンス工事はまったくそれに逆行するものである。そこで県民及び関係市町村の理解を得なければできないと考え、地元紙への広告もその一環として行ったものだという。

県と国との打ちあわせにおいてもこれは軍事目的ではないのかというやりとりをしており、国は「テロ対策」という国策のためにはできるだけ国民に知られないように「なし崩し的」に事を進めるよう県を指導しているのである。国民に真実を知らせず、既成事実を 積み上げていき、戦争に引きずり込もうとする政府の姿が見えてくる。


「テロ対策」のためなら何でもできるのか?


港湾管理責任者として、降ってわいたような法律制定にとまどう県に対して国はどうやって説得したかと言えば、「保安措置を講じていない岸壁などから出航した船舶は、他国の港に入港する際に厳重なチェックを受けるなど不利益を被る可能性があり、場合によっては入港を拒否されるかもしれない」といって脅した。熊本県も、八代港から輸出入を行う企業などから貿易ができなくなるのは困るという要請を受け、納得せざるを得なかったと言う。



一部開いた所で海を見る

元々SOLAS条約の改定は9.11後アメリカブッシュ政権の強い後押しで実現されたものである。近隣諸国でどのようになっているのか、実情を調査する必要があるが、主要国の貿易港すべてでこの基準を満たすのは容易な事ではない。「テロ対策」を口実に港が市民の憩いの場から、市民を監視し、排除する場所へと変貌する事を主権者として許すわけにはいきません。親しんだ港が「テロ対策」を口実にして市民から奪われていく現実が、政府の狡猾さも手伝ってイラク派兵や、改憲と闘う市民にあまり知られていないように感じられる。全国的に見ても、釣り愛好家たちが政府に公開質問をするなどの動きはあるものの、市民運動の反応が弱いような気がする。今後各地で実態調査が行われ、「平和的生存権の侵害」の実態が明らかにされていく事を期待したい。


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