自衛隊イラク派兵違憲訴訟の会・熊本
ホームあゆみ会員募集リンク問い合わせ


資料  2007.11.30
あゆみ第11回口頭弁論参照:結審

意見陳述一覧 参照

(5) 加藤修 意見陳述




第11回口頭弁論 

2007年11月30日 熊本地裁


最終意見


弁護士  加藤修

「一つの妖怪がヨーロッパにあらわれている。 ― 共産主義の妖怪が」

マルクス・エンゲルスの著作「共産党宣言」の有名な冒頭部分である。この部分に習って,現在のわが国の状況を次のように言うことができる。

「一つの妖怪が日本の国を覆っている。 ― 軍事の妖怪が」

日本の国が,平時の国から戦時の国に変えられつつある。平和か戦争か。しかもこれは日本自身が自らの欲求によって変えられているものではない。アメリカが,アメリカの戦争を世界中で行うため日本を動員しようとして,日本政府をして,このような危険,かつ世界の平和を脅かす行動に駆り立てている。

軍事は我々の生活全般に耐え難い影響を及ぼす。

戦争をする国になれば,戦争に勝つことが第一の目的となる。基本的人権は邪魔者となり,福祉や社会保障は存在さえも許されなくなる。

軍事費はさらに膨大となって国民の生活を圧迫する。莫大な,戦闘機,艦船,武器弾薬の予算,そして人の命を消費する。

教育は,国のためにすすんで死に,人を殺す人間となることを教え,人間の文化ややさしさをさげすむ。
 
この間のテロ特措法延長をめぐる論議の中で,米日両政府の執念があからさまとなった。そして日本の行動と,アフガニスタン・イラクでの罪なき人々の殺害との因果関係が明らかとなってきた。

また防衛省と兵器産業の癒着構造の中で,利権にうごめく人々の群をみた。

一体人の命をなんと思っているのか。

国民の目を盗んで日米両政府は日本に軍隊をつくり,これをアメリカの軍隊に組み入れ,日本全体をアメリカの基地とし,日本にアメリカの価値を押し付ける。

一体国の独立,国の主権をどのように考えているのか。

イラクで司令官だったジョン・バティスト少将は,中将昇進を目前にして大統領にイラク戦争が間違っていることを伝えるために除隊した。彼は「後悔は全くない。自分が忠誠を尽くすべきは大統領という一個人ではなく米軍でもなく,アメリカ憲法の理念だと気付いたからです。自分たちのしていることがそこから外れた時はすべてを投げ打ってでもブレーキをかける,なぜならば憲法の理念とは人間の理想だからです。一つの国家や政府の利害ではなく人間が人間らしく幸せに生きるための核,私は一軍人としてよりも人として自らの良心に忠誠を尽くす方を選んだのです」と述べている。

我々の愛する平和憲法は,ボロボロにされながらも崖っぷちでとどまっている。62年間戦争をせず,武力行使をせず,我々国民を守ってくれた平和憲法,そしてその第9条も今政府は変えようとしている。しかしこれに反対する全国の9条の会は,全国6千を超えている。

原告らの主張や行動は,人間として当然の行為である。誰も傷つけない,自分からも誰からも傷つけられない。このことを原告らは望んでいる。そしてそれを「平和的生存権」という言葉に託して,裁判所の判断を待っている。我々は平和憲法を全世界に広め,争いあいや憎みあう心をなくしていく世界をつくる。それに反する一切の行為を排除する。

裁判長,裁判官,今日まで原告らの訴に真摯に向き合っていただいたことを感謝いたします。私たちの希望は,イラクからの帰還兵が「あこがれ」と呼ぶ日本国憲法第9条に日本の現実をあてはめていただきたい。この当たり前の作業によって法の持つ輝きを取り戻してもらいたいということです。




このページの上に戻る