自衛隊イラク派兵違憲訴訟の会・熊本
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資料  2007.11.30
あゆみ第11回口頭弁論参照:結審

意見陳述一覧 参照

(2)河口大輔 意見陳述




第11回口頭弁論 

2007年11月30日 熊本地裁



平成17年(ワ)第367号 外 
自衛隊イラク派兵差止等請求事件


原告  藤岡崇信 外
被告  国

意見陳述


平成19年11月30日 

熊本地方裁判所第2民事部 御中

原告ら訴訟代理人
弁護士  河口大輔


当職は,以下のとおり,意見を陳述する。

 本件では,イラク国内,特に自衛隊派遣地域の治安状況が重要争点となっている。なぜならば,イラク特措法上,戦闘地域でないということが自衛隊派遣の要件となっているし,戦争地域に自衛隊を派遣することは憲法違反の行為に他ならないからである。

2 そして,イラク国内の治安状況は,自衛隊派遣の当初から内戦と呼ぶべき状況であり,しかも改善の様子はなく,悪化の一途をたどるばかりであった。

2003年末から2004年初にかけて自衛隊が派遣された時点でも連日にわたってイラク全土で自爆テロ等の攻撃が発生し,2004年1月から陸上自衛隊が駐留したサマワにおいても治安が良好とは決して言えない状況であった。

同年2月にはサマワで迫撃砲による砲撃が複数回起こった。同年5月にはサマワで民兵とオランダ軍との銃撃戦やCPA事務所を狙った砲撃も起こった。同年8月21日,23日,24日には自衛隊宿営地周辺に砲撃が起き,9月22日には宿営地内にロケット弾が着弾した。その後もサマワでは自衛隊等に対する攻撃や暴動が頻発した。

結局,陸上自衛隊のサマワ撤退に至るまで,サマワの治安は改善することはなく,治安が比較的良好とされたサマワにおいてすら,内戦と呼んでもおかしくない治安状況であったことは明らかである。

もちろん,バグダッドをはじめとして,イラクの各地においては連日自爆テロや武装勢力による攻撃が続き,まさしく内戦に他ならない状況であった。当初より起こっていたアルカイダ系武装勢力による攻撃のみならず,シーア派とスンニ派の宗派対立も治安状況の悪化に拍車をかけた。

イラク国内では,2006年の1年間での民間人死者数が26540人に達するとの集計もされた。

イラクにおける治安状況がその全土において内戦状態であったことは既に原告らが立証したとおりである。


 このようなイラクの治安状況を受けて,2006年9月18日には国連のアナン事務総長がイラクが全面的内戦に突入する危険性を警告し,同年11月からはアメリカの各メディアもイラクの治安状況を「内戦」と表現するようになった。この頃から,イラク指導部も,イラク国内の治安について「ほぼ内戦状態」との認識で一致するようになっていた。

2007年2月2日にアメリカ政府が公表した報告書においても,イラクの現状を「内戦」と認定し,3月14日にアメリカ国防総省が公表した報告書においても内戦に相当すると認定された。このように,イラクの治安は,アメリカ政府においてすら内戦であると公式に認定している状況なのである。」


 

 もちろん,現在航空自衛隊が活動しているバグダッド空港等においても例外ではなく,明らかに戦闘地域である。
航空自衛隊は,2006年7月31日からバグダッドに乗入れて活動を開始したが,バグダッド全体で爆弾テロが続発していたことは言うまでもなく,同年10月5日には,アメリカのライス国務長官が到着予定のバグダッド空港周辺で砲撃があり,同長官を乗せた飛行機の到着が遅れるという事件も起きた。


5 以上のとおり,明らかに,現在のイラクの治安状況は内戦状態であり,イラク全土が戦闘地域であるから,陸上自衛隊が派遣されていたことは違法な行為であったのであり,現在の航空自衛隊のイラク派遣も違法である。


 小泉純一郎元首相は,かつて,「自衛隊が活動している地域は非戦闘地域だ」との非常識な説明を繰返した。

このような詭弁がまかり通るのであれば,法治主義は有名無実と化す。

御庁におかれては,冷静かつ慎重に,イラクの治安状況を判断されたい。


以 上




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