自衛隊イラク派兵違憲訴訟の会・熊本
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資料  2007.11.30
あゆみ第11回口頭弁論参照:結審

意見陳述一覧 参照

(4) 塩田直司 意見陳述




第11回口頭弁論 

2007年11月30日 熊本地裁


意見陳述


弁護士 塩田直司

 私は,自衛隊がイラクに派遣されたことにより原告らの利益が具体的に侵害されていることについて,理解していただきたく意見陳述をします。イラクに自衛隊が派遣されたことにより,原告らに対する生命身体の自由に対する侵害の危険性が単なる抽象的なものでなく,具体的なものとなってきているというべきであります。

2 イラクのサダムフセイン政権は,確かに崩壊しました。しかし,イラクの治安はいっこうに収まらず,むしろ内戦化していると言わなければなりません。イラクに対するアメリカの攻撃に賛同する有志連合に対して,アメリカの侵攻に反対する反撃は,テロ行為として,その参加している国の人々に対するテロ行為として発生しているのです。

たとえば,2004年3月11日の早朝,スペイン・マドリード市内のアトーチャ駅など3つの駅で大規模な爆発が起こりました。通勤ラッシュの時間帯のため被害は拡大し,192人が死亡,2000人以上が負傷する大惨事となりました。

犯行後,「アブ・ハフス・アル・マスリ隊」と称するアルカーイダ系のテロリストグループがロンドンのアラブ系有力紙に犯行声明を出しました。「死の部隊が欧州の深部に浸透し,十字軍の柱の一つであるスペインを攻撃し痛打を与えることに成功した」「アスナールよ,米国はどこだ。だれがお前を我々から守ってくれるのか。英国,日本,イタリア,そのほかの協力者か?」などと,電子メールを使って送ってきたのです。

 また,2005年7月7日午前8時50分頃,イギリスの首都ロンドンにおいて地下鉄の3か所がほぼ同時に,その約1時間後にバスが爆破され,56人が死亡するテロ事件が発生しました。自爆テロとされていますが,この事件もアルカイーダの関与があるとされています。

 このように,自衛隊がアメリカのイラク侵攻に協力していることに対して,アルカイーダ等のテロ組織の標的となる具体的危険性があることは,スペイン,ロンドンでのテロ行為の存在からも明らかでしょう。

 さらに,政府自身も,入管難民法を改正し,16歳以上の外国人を対象に,入国審査で指紋と顔写真の提供を義務付ける改正を行いました。そして,改正法は平成19年11月20日施行され,全国の27空港や126の港で一斉に運用が始まりました。こうした「生体情報」採取システムは,アメリカ同時多発テロ後に導入した米国に次いで2番目であるが,日弁連や人権団体などから「情報の保存期間が不明で,犯罪捜査に際限なく利用される」と懸念の声が出ているにもかかわらず,政府はテロ対策のためと実施に踏み切ったのです。これらは政府自身がテロ発生の具体的危険性を認識しているからに他ならないからと思います。

 

 原告らが侵害を受けた具体的利益については,原告らの原告本人尋問や陳述書の中で具体的に主張しています。原告らの宗教家としての思想や教育者としての思想,平和運動家としての思想などが踏みにじられているし,また自衛隊の派遣を通じ表現の自由が侵害された事実を法廷で証言してきました。

裁判所におかれては,このような原告らの主観的利益の侵害行為の存在を,受け止めていただき,損害賠償,違法差止の要件の吟味をしていただき,原告らの主張の正当性を認めていただきたいと思います。





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