自衛隊イラク派兵違憲訴訟の会・熊本
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資料 2006.07.07

第6準備書面



平成17年(ワ)第367号
自衛隊イラク派遣差止等請求事件
       原  告    藤  岡  崇  信    外45名
       被  告    国    
               

原告ら第6準備書面

 2006年7月7日   
熊本地方裁判所
    第2民事部 御 中
                                       原告ら訴訟代理人          
                                           弁 護 士    加  藤    修  
   外 
 

イラクにおける近時の治安状況について


以下のように,イラク新政府が樹立されたにもかかわらず,イラク国内の治安状況は悪化の一途であり,フセイン政権下で押さえ込まれていた宗派間・民族間対立が一気に顕在化,深刻化して,イラク各地で連日,襲撃やテロが頻発している。特にイスラム教シーア派勢力は,配下の民兵組織による他勢力襲撃等の暴走を黙認し,国民融和が一層困難な状況になっている。
それのみならず,シーア派内部の内紛も発生・激化し,まさにイラク国内は内戦寸前の状況にあり,多数のイラク国民が住居を追われ,避難民となっている(避難民は15万人にも上るとの推計もある。甲3−284参照)。


イラク国内で発生したテロ事件等

(末尾の括弧内の数字は,対応する甲3号証(新聞記事)の枝番号)

2006年
4月12日 中部バクバ近郊のシーア派モスク近くで,車爆弾が爆発し,少なくとも26人が死亡,70人が負傷した(200)

13日 13日から14日にかけ爆弾テロ・拉致・殺人事件などが相次ぎ,両日で50人以上が死亡した(202)

16日 バグダッドなどで爆弾の爆発が2件あり,少なくとも計13人が死亡したほか,イラク各地で16日,爆弾の爆発やバスなどの襲撃が相次ぎ,少なくとも25人が死亡した(204,205)

22日 同日,バグダッド南方の2か所で仕掛け爆弾が爆発し,米兵5人が死亡,また,殺害,遺棄された遺体の発見も相次ぎ,首都などで拷問を受けて殺された12遺体が見つかった,一方,中部ラマディでは,同日,米軍とイラク軍が武装勢力4人を殺害,中部ムクダディヤでは連続爆弾テロで2人が死亡,首都では警官と市民が射殺された(211)

23日 バグダッド北西の道路に仕掛けられた爆弾で米兵3人が死亡した。同日,首都中心部で迫撃弾かロケット弾によると見られる爆発が11件あり,7人が死亡,8人が負傷した。また,首都の2か所で計8遺体がみつかった(211)

26日 武装勢力「アンサール・スンナ軍」を名乗るグループは,同日,米軍と関係のある会社で働いていたとして,アラブ系男性3名を殺害した映像をウェブサイト上で公開した(213)

27日 イラク副大統領の妹がバグダッド南西部で銃撃され,殺害されたほか,同日,サマワ南東約100キロの南部ナシリヤのイタリア軍基地近くで爆弾が爆発し,イタリア兵3人とルーマニア兵1人が死亡した。また,イラク中部バクバでは,武装勢力が警察やイラク軍施設を襲撃してイラク軍との間で戦闘となり,30人が死亡した(214,215)

5月2日〜3日 ファルージャの警察署で自爆テロが起き15人が死亡,30人が負傷するなど,2日から3日にかけてのイラク国内でのテロ等の死者が52人に達した(221)

6日 イラク南部バスラ中心部で英軍ヘリが墜落して英兵5人が死亡した(222,226)

7日 バグダッドとシーア派聖地カルバラで相次いで車爆弾が爆発し計30人が死亡した。カルバラでは同日午前にも車爆弾で21人が死亡,バグダッドのスンニ派地区でも車爆弾でイラク兵8人死亡,首都北部でも同様の爆発でイラク兵1名死亡,負傷者は上記3件で70人を超えた。また,首都では6日から7日にかけて,拷問の末に銃殺されるなどした42遺体が見つかった。さらに,同日,首都北部のモスクの地下で爆発があり,武装勢力と見られる1人が死亡,2人が負傷した(222,223)

8日 イラクで爆弾事件や殺害されたと見られる遺体の発見が相次ぎ,少なくとも34人の死亡が確認された(226)

9日 イラク北部タルアファルの市場で,トラックを使った自爆テロがあり,買い物客ら少なくとも17人が死亡,35人が負傷した。また,このほかにもイラク各地で計17人の遺体が見つかったほか,銃撃爆弾で計7人の死亡が確認された(227)

12日 サマワで,警備会社の警備員が運転する陸自契約車両が,道路脇の爆発物の爆破で破損した(228)

13日 同日未明,サマワで,ロケット弾や自動小銃等で武装した武装グループが警察の建物や検問所,パトカーなどを一斉に襲撃,応戦した警察と銃撃戦となり,流れ弾で子供1人が負傷した(229)

14日 13日から14日にかけ,イラク各地で少なくとも13件のテロがあり,少なくとも41人が死亡した。また,14日,バグダッド南西で米軍ヘリが武装勢力に撃墜され米兵2人が死亡したほか,首都と中西部アンバル州で米兵4人が殺害された(230,231)

18日 イラク各地で爆弾テロや襲撃が相次ぎ,少なくとも23人が死亡したほか,中部バクバでは,スンニ派聖廟が爆破された(232)

20日 バグダッド北東部サドルシティーで爆弾テロがあり19人が死亡,58人が負傷した。また,西部カイムでも同日,警察署内で自爆テロがあり,警官5人が死亡,10人が負傷した(234)

24日 サマワのあるムサンナ州で電力省事務所職員が誘拐された(236)

29日 バグダッド中心部で車爆弾が爆発し,米軍に同行していた米テレビ局スタッフ2人が死亡,1人が重体となったほか,米兵1人と米軍に雇われたイラク人1人も死亡,米兵6人が負傷した。また,この他にも,イラク各地で爆弾テロなどが相次ぎ,計37人が殺害された(240,241)
30日  イラク各地で,市場での爆弾テロなどが相次ぎ,計54人が死亡した(242)

31日 サマワ中心部で移動中の陸自・豪軍の車列近くで爆発があり,豪軍車両1台が破損した。また,中部サマラで,車で病院に向かっていた女性2人が米軍の発砲で殺害された(245,246)

6月3日 バグダッドでロシア人外交官らが武装集団に襲撃され,1人が殺害され,4人が拉致された(250)

4日 バグダッド北方で武装勢力がバスに乗っていた民間人24人を射殺した。また,同日,バスラのスンニ派組織は,治安当局がモスク内で非武装の12人を殺害したと発表した。サマワ中心部では,市民デモが暴徒化し,17人が負傷した(251,252)

5日 バグダッド中心部で,武装集団が複数の旅行代理店などを一斉に襲撃し従業員ら約50人を拉致し逃走した。また,各地でバスなどを狙った銃撃事件などが相次ぎ,26人が死亡したほか,バグダッド南部では武装集団が通学バスを停車させて銃撃し,学生ら11人が死亡,西部ラマディでは迫撃弾が民家を直撃し,5人が死亡した(253)

6日 首都北方バクバ近郊で9人の遺体(頭部)が見つかったほか,全土で少なくとも計30人の死亡が確認された(254)

13日 車爆弾テロや自爆テロが相次ぎ,警官ら少なくとも16人が死亡した(262)

16日 バグダッドで,イスラム教シーア派のモスクで礼拝中に自爆テロがあり,少なくとも10人が死亡,25人が負傷したほか,首都で,迫撃砲が民家を直撃,3人が死亡した(264)。また,イラク中部で米兵2人が武装勢力に拉致され,19日に遺体で発見された(268,272)

18日 サマワの英豪軍宿営地近くに迫撃弾1発が着弾した。また,首都周辺では,パン屋から10人が武装勢力に拉致されたほか,迫撃弾攻撃で4人が死亡,また,女性を含む17人の射殺体も見つかった(267,268)

19日 バグダッドで,イラク軍が車爆弾で狙われ5人が死亡,9人が負傷したほか,中部カルバラや北部モスルなどでも警官やイラク兵ら計5人が射殺された(269)

20日 イラク各地で市場などを狙った爆弾テロが相次ぎ,少なくとも計20人が死亡した(272)

21日 イラクのフセイン元大統領の弁護士が殺害された(276)

23日 イラク中部タージで,労働者少なくとも80人が武装勢力に拉致された(277)

25日 サマワ中心部で,25日,州評議会元議長宅に爆弾が投げ込まれた(282)

26日 武装勢力に拉致されたロシア大使館員4人が殺害されたとの声明がだされ,一部の殺害場面のビデオ映像も公開された。また,中部バクバ近郊等で2件の爆弾テロがあり計25人が死亡した。この他に各地で武装勢力の攻撃があり32人が死亡し,合計57人が死亡した(282,283)

29日 サマワで,陸自の無人ヘリが墜落した(285)

7月1日 バグダッド北東部サドルシティーで,車爆弾によるテロがあり,少なくとも71人が死亡,125人が負傷した(286)

2日 サマワの英豪宿営地で大きな爆発音があり,警察当局者は,ロケット弾少なくとも3発の着弾の可能性があると発表した(289)

以上のように,イラク国内の治安状況は悪化の一途をたどっており,もはや内戦寸前,あるいは,既に内戦状態と言っても過言でない状況であるのは明らかである。

このような状況を踏まえ,イラクに部隊を派遣している各国は,相次いで部隊撤退を検討・表明しており,ついに,我が国政府も,陸上自衛隊の部隊をサマワから撤退する旨の方針を表明するに至った(甲3−270以下参照)。

現在のイラクの治安状況は,イラク特措法の「非戦闘地域」という派遣要件を充足していないことは明らかであり,陸上自衛隊の撤退は当然のことである。そして,現在のような治安状況が続くのであれば,航空自衛隊の活動継続や,陸上自衛隊の再派遣は,イラク特措法に違反することは明白である。

以 上   


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