自衛隊イラク派兵違憲訴訟の会・熊本
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資料  2008.07.14
あゆみ控訴審第1回口頭弁論

意見陳述一覧 参照

板井俊介 意見陳述




控訴審第1回口頭弁論 

2008年7月14日 福岡高裁

弁護士  板井俊介
意見陳述


第1 航空自衛隊のイラクにおける活動実態

1 黒塗りの週間空輸実績報告書

航空自衛隊の航空支援集団司令官名義の統合幕僚長宛「週間空輸実績報告書」(甲第46号証)によれば、航空自衛隊は、陸上自衛隊がサマワから撤退した平成18年7月17日以降、「陸上自衛隊」でもなく、「国連関係者」でもなく、「日本国政府関係者」でもない「人員」と「貨物」を大量にイラク国内(バグダッド空港)に空輸していることが一目瞭然であったが(原審第9準備書面)、この状況は、現在も変わっていない。
   
すなわち、現在も、航空自衛隊は米軍を中心とした多国籍軍と、その武器弾薬をイラク国内に補給し続け、イラク国内で掃討作戦を行っている。平成18年11月にイラクから帰国した航空自衛隊幹部も「多国籍軍のために輸送力を提供しているのは日本だけ。空輸している人数を比べれば、・・国連職員より多国籍軍兵士の方が多い」と明言する(甲第93号証、2007年3月28日報道における前空輸計画部長井筒俊司一佐の証言)。
航空自衛隊が、米軍の増派のために空輸した多国籍軍とイラク治安部隊との合同軍事作戦により、本年4月9日においても、イラクでは罪もない子どもや民間人の殺戮が繰り返され、現地の病院関係者も「床が子供の血であふれている」と訴えている(甲第3号証の718)。航空自衛隊が空輸した多国籍軍により傷つけられ、血まみれになった幼い子どもには、親もあれば祖父母もいる。現行憲法下でこのような活動がされている現実から目を背けることは許されない。

一方で、空自関係者は、「任務遂行が日米間の信頼関係を強固にしている」と断言しているが(甲第93号証、2007年3月30日太田将史三佐の証言)、そこでは憲法的観点はまったく抜け落ちている。
名古屋高裁判決は、まさにこのように、我が国の自衛隊が多国籍軍と一体化し、イラク国内における武力の行使、殺戮行為に加担している現実を指摘したものであるが、これを裏付けるのが、黒塗りの空輸実績報告書である(甲第91、92号証)。
   
これによる限り、平成20年4月17日の名古屋高裁判決以降も米軍の空輸は継続されており、今日現在も、航空自衛隊がイラク国内での米軍の戦闘行為と一体のものとして、これを支えていることは明らかである。

第2 陸上自衛隊も「戦闘地域」に存在していた裏付け

昨日の報道によれば、平成18年7月16日にサマワから撤退したとされる陸上自衛隊の宿営地に対しても、陸上自衛隊を狙った迫撃弾、ロケット弾攻撃が合計13回、着弾した数にして22回であったと報告されている(中日新聞平成20年7月13日朝刊1面)。実際に、危険を察知した「陸上自衛隊は1年以上かけて砲弾を通さない要塞のようなコンクリート宿舎」を作ったことも報告されている。しかも、前統合幕僚長である先崎一氏は、事前に米軍から危険情報の提供を受けたが、「情報が決定的に不足していた」ことを素直に認め、平成19年3月に情報部を創設し、合法なスパイ活動を行う予定であるという。
   
自衛隊は、現地での攻撃に対する対処のためにスパイ活動を行うというわけであるが、これは、当時のサマワが、明らかに戦闘が行われている状況にあった証である。このように、イラクにおける自衛隊の活動が、違法かつ違憲であることを裏付ける証拠は十分である。


第3 被告国は、これらの事実につき認否・反論せよ


名古屋高裁判決は、平成20年5月1日の満了を以て確定しているのであり、違憲判断は法的に確定している。そうである以上、すべての権力行使を憲法に拘束される被告国は、憲法を真正面から無視し、違憲状態を継続することは絶対に許されない。違憲判決に従わないというのであれば、それはすでに法の支配の崩壊を意味する。
   
被告においては、原告の指摘に対し、認否、反論すべきである。それすら行わないで、名古屋高裁判決につき異論を述べるのは、公正ではない。
   
裁判所におかれては、法の支配の崩壊を追随するのか、司法を無視し続ける行政の在り方を正すのか、国家における司法の権威をさげすむことなき訴訟指揮を行うべきことを、ここに求める。
                            


 以 上



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