自衛隊イラク派兵違憲訴訟の会・熊本
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 資料
 

訴 状

1
請求の趣旨
請求の原因
第1 この訴訟の意義

「自衛隊のイラク派兵差し止め等請求事件」訴状(2005年3月18日)を
 4ページに分けて掲載します。

1 請求の趣旨
   請求の原因 第1 この訴訟の意義


2 請求の原因 第2 イラク戦争の実態と日本の関与 

3 請求の原因 第3 自衛隊派兵は「侵略」への加担に他ならない
         第4 自衛隊派遣の違憲性・違法性


4 請求の原因 第5 原告らの被侵害利益
         第6 原告らの請求



 請 求 の 趣 旨



 被告が「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」により,閣議決定した基本計画中,自衛隊をイラク及びその周辺地域に派遣する計画は違憲であることを確認する。

 被告は,「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」により,陸上自衛隊第8師団をイラク及びその周辺地域並びに周辺海域に派遣してはならない。

 被告は,原告らに対し,各金1万円を支払え。

 訴訟費用は被告の負担とする。

 との判決を求める。


請求の原因 第1 この訴訟の意義


 1

本訴訟は,戦争放棄・戦力不保持と平和的生存権を保障した日本国憲法の徹底的な平和主義に基づき,「全世界の国民がひとしく恐怖と欠乏から免れ,平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」(憲法前文)ことが人類の念願であることを確信する原告らによって提起されたものである。

憲法9条の戦争放棄・戦力不保持の規定にもかかわらず,日米安保条約の下に,自衛隊が創設され,今や米,露,中国に並ぶ軍事大国化した我が国が国際貢献の名の下に米英のイラク「侵略」に手を貸し,イラクに自衛隊を送り込んだ。これは,正に憲法が全世界の国民の権利として確認している「平和のうちに生存する権利」を侵害するものに他ならない。憲法の保障する「平和的生存権」は,自由権及びそれを修正した社会権をさらに1歩すすめた新しい人権であり,憲法はこの新しい人権を先取りしたものであった。

原告らは,この新しい基本的人権を確立することが,人類の多年の念願である「恐怖と欠乏から免れ,平和のうちに生存する」ことを可能とするものであることを確信している。

本訴訟の第1の意義は,日本と世界の平和のために,この「平和的生存権」を,憲法によって憲法の有権的解釈権を授権された裁判所が認知することにより,「平和的生存権」が具体的かつ裁判規範性を有する権利であることを確立することにある。



本訴訟の第2の意義は,憲法擁護の最後の砦としての裁判所に対しその責務を忠実に果たさせて「法の支配」すなわち「憲法の支配」を確立することにある。

日本国憲法制定後今日まで,裁判所は違憲判断に極めて消極的であった。そのことが,憲法9条に関して如実に示されている違憲状態の固定化を招いた。多くの改憲論者が「現実にあわない憲法を現実にあわせろ。」と主張するが,「現実」が「憲法」に適合しないのは「現実」が違憲の状態にあるからであり,憲法に適合するように「現実」こそ改変しなければならないはずである。それにもかかわらず,違憲の状態にあるから改憲を主張するなどというのは言語同断である。

このような現状を見るにつけ,国家権力の横暴を抑制するために制定された憲法がその機能を果たしていないのは,「憲法の支配」の実効性を担保するために憲法が裁判所に授権した違憲審査権を行使することに,裁判所が極めて消極的であったからと言わざるをえない。もとより,司法消極主義の根拠にも相当な理由はある。しかしながら,裁判所が違憲審査権をほとんど行使してこなかったのは,どこかに大きな誤りがあるといわざるを得ない。このことは,良識ある裁判官にとって痛恨の極みであると思われる。最近の地裁判決で,次のように述べていることにその辺の事情が読み取れる。

すなわち,「当裁判所は参拝の違憲性を判断しながらも,不法行為は成立しないと請求は棄却した。あえて参拝の違憲性について判断したことに関しては異論もあり得るとも考えられる。しかし,現行法では憲法第20条第3項に反する行為があっても,その違憲性のみを訴訟で確認し,または行政訴訟で是正する方法もない。原告らも違憲性の確認を求めるための手段として,損害賠償請求訴訟の形を借りるほかなかった。」とした上で,「本件参拝は,靖国神社参拝の合憲性について十分な論議も経ないままになされ,その後も参拝が繰り返されてきたものである。こうした事情に鑑みるとき,裁判所が違憲性について判断を回避すれば,今後も同様の行為が繰り返される可能性が高いというべきであり,当裁判所は,本件参拝の違憲性を判断することを自らの責務と考え,前記のとおり判断する。」(福岡地裁平成16年4月7日判決) 

  


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